三角 泰利 の日記
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安部芳裕「金融のしくみは…」.10
2019.09.29
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信用創造とは銀行の詐欺行為
銀行の信用創造は将来価値の先取りになります。このことについて少し説明しましょう。Aさんが銀行家から100万円借りて、利子込みで110万円返済するケースを考えてみましょう。Aさんは融資を受けた100万円を事業に投資します。原材料の仕入れ、人件費、燃料費などの減価償却費のコストに付加価値を加えて売り上げを110万円あげれば、初めて銀行家に110万円を返済できます。
仮に、120万円の売り上げならは、初めてAさんは手元に10万円の資産が残ります。逆に、もし110万円を返済できない場合は、何かしら担保に入れた実物財を没収されることになります。つまり、信用創造は、Aさんが将来的に経済活動によって価値を生み出すことを前提に、そこで得られる成果を先取りしている行為なのです。
この時、銀行がおこなう作業といえば、ただ銀行券を印刷して渡すだけです。銀行の保有する何かしらの実質的な財を貸し出しているわけではありません。
しかも、この貸付の元になっている金は、銀行家のモノではありません。顧客の金を内緒で勝手に利用しているのですから、これは詐欺的な行為と言ってもいいでしょう。でも、そのことは秘密にされてきたので、誰からも文句が出るものではありませんでした。
ただ、たまに困ったことが起きました。金の持ち主である顧客が、何かの理由で一斉に金を引き出しに来た時です。銀行家の金庫には、紙幣の分だけの金は存在しません。そういう時には、他の銀行家から一時的に金を借りて、その場を凌ぎました。逆に、他銀行で取り付け騒ぎが起きた時には、融通をしてあげます。
こうして後めたいことをしている同士、銀行家間で秘密のカルテルを形成していくことになります。一度、引き出された金も、やがてはまた銀行家の金庫へ戻ってきます。そして、もし、この銀行家同士が華族であれば、金は常にこの一族の金庫の中にあることになります。